小説:月光は降り積もる


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プロローグ


 月の光は、どうしてこんなに静かに地上に降りてくるんだろう。

 雨のように雪のように、形を作ったり、
 肌を焼く太陽のように、感覚に訴えたり、

 そんなふうにわかりやすく教えてくれれば、
 その存在の美しさに、

 もっともっと気づけるはずなのに――――――。



 ――――――だから、

 こんなにも静かだから・・・、


 その優しさにやっと気づいた時、

 顔をあげても、もうその"月"はいなかった。



 ――――――ねぇ、

 涙で滲んだあたしの目では、

 ただそこにあるものしか見えなかったよ。



 あたしを包んでくれていた光が、

 こんなにも切なく降り積もってきたものだなんて、





 ―――――――知らなかったよ・・・。








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