小説:食べられる花


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Episode:資


 必要なのはコンドームスキン
 あと歯ブラシと――――――アルコール色々混ぜたから、朝に備えて念のためスープも買っておこうかな。

 酔いが醒め始めた思考を次々と展開させながら、コンビニの、真っ白に光って深夜徘徊者には眩し過ぎるくらいの商品棚の間を進む。


 『――――――お』

 咲夜さくや絶賛、0.01mm発見。
 六個入り二千円弱か。
 日本に来たばかりの頃に咲夜さくやが何に一番感心してたかと言えば、多分これだったな…。

 カゴに放り込んでレジへと向かう。

 コートのポケットの中には雪の部屋の鍵。
 家主の本人は今頃、ベッドの中でぐっすり眠っている筈だ。

 列に並びながらスマホを見れば、亜希から『悪さしないでよ』と冷やかしのメッセージが入っていて、

 "悪さはしません"

 そう返せば、亜希が七緒ちゃんアバターとして使っている女の子の、

 "ほんとだよ? 約束ね"

 というスタンプが、即レス。

 亜希の隣で、俺に"持ち帰り"された雪の心配をしている七緒ちゃんが簡単に想像できる。
 今までが彼女無しのセフレしのぎだったから、どうやら信用がないらしい。

 それに関しては、これからを見て貰うしかないけれど。


 『――――――あれ? たくみ?』


 順番が来てレジ台にカゴを置いたタイミングで、前の女子二人のうち背の高い方の一人が覗き込むようにして俺を見た。


 『元子ちゃん』

 ショートカットが後押しして、勝気な印象がある美人に反射的に出た名前はそれ。
 なっちゃん経由で大学時代から仲間の一人として長い付き合いをしている、現在はAV制作会社の経営者。
 …女性のための、という前看板が付く。

 俺と亜希の元カノをAVの世界に引き込んだ人物でもあり、セクシャル・フルイディティ。
 隣にいる可愛らしい子との手のつなぎ方を見れば、どうやら今の恋愛対象は女の子らしい。

 前に並んでいた事すら、ずっとスマホを見ていて気付かなかった。

 『びっくりした。元子ちゃん、デート?』

 連れの女の子に軽く会釈をしながらそう尋ねれば、

 『まあね』

 綺麗な笑みで頷かれた。
 赤い口紅がここまでしっくりと似合う人も珍しいよな、とは、元子ちゃんにいつも抱く感想だ。

 そう言葉を交わす間に、中年の男のキャッシャーが値段を読み取った商品を袋に移し始めた。

 ちなみに彼女は、適当にセックスをする男にとっては危険人物。
 好奇心旺盛な女子ならともかく、大学でも有名だった大人しい箱入り娘が元子ちゃんによって開花させられ、当時言い寄ってきていた構内一の遊び人に、ヘタの烙印を押させた逸話を持つ女傑。
 それプラス、大学卒業直前に男から女を寝取った事で更に名を馳せた存在だ。

 仲間内からは寝取らないと信用はされているししているけれど、自分の恋人が彼女に惚れない確率はゼロではないわけで。

 …彼氏がいる時期は安心なんだけど、恋愛対象が女子の時は、やっぱり女子に対する雰囲気が口説きモードのように見えるのが男共を焦らせる。
 全体的に中性に見えるのに、色気はしっかりと漂っているからライバル視は仕方ないと庇っておこう。


 それに――――――、


 困った事に、雪が元子ちゃんに懐柔されそうなイメージが全く否定できない。
 自分に置き換えて初めて、元子ちゃんの底知れぬ脅威を実感した。

 ちゃんとしか関係性が出来るまでは、雪とは会わせたくなかったのが本音で、この場に居ない事にはっきりと安堵が走る。

 ごめん、元子ちゃん。


 『珍しいじゃない? この辺りで会うなんて。どうしたの?』
 『亜希ンとこの帰り』
 『ああ、そっか。早めにNG出してたから忘れてたわ』

 そう言いながら笑った元子ちゃんの目線が、レジへ向いた。

 『…ふふううん? 0.01。本気モードじゃない?』
 『…本気モード?』

 カードを使ってキャッシュレスで支払い、次の人に位置を譲って歩き出した俺に二人が付いてくる。

 『セフレにそれは選ばないでしょ? コンビニには安くて良い商品がそれなりに数多くあるわけだし』
 『なるほど?』
 『値段に妥協せずそれを選んだって事はつまり、限りなく近づきたいと思える特別な相手と、一緒にいるわけだ、たくみ

 真っ赤な唇が、にっこりと弧を描く。
 何とも不思議な気持ちに誘われてしまう。

 『別に…そういう』

 言いかけた俺を完全に無視するように、元子ちゃんは自分の恋人の肩に腕を廻し、もう片方でバイバイと手を振った。



 『今日は急いでいるからまた今度ね。その時詳しく聴取するから』
 『…』


 複雑だ。

 これまで、元子ちゃんと会話して、押される事なんか無かったのに、始終ペースを握れなかった。



 『――――――ったく』


 堂元さんに"ちゃんと向き合う"と宣言した以上、気を張っている部分があるのか、自分自身で理解していた筈の宮池たくみゲシュタルトが崩壊中。

 確かに、これまでの避妊具は何も考えずにいつも同じ、無難な物を選んでいた事は認める。
 いつもなら、部屋に入る前にコンビニに寄って買い物をして、大人の男女として楽しい時間を過ごして精を吐き出したらシャワーして帰る。

 それが大体のお決まりのルーチン。


 でも今日は――――――、

 雪と二人、タクシーで移動したその途中、コンビニは幾つもあったのに、寄るなんて選択肢は到底なく、

 俺にもたれるようにして眠る雪を、タクシーに置いたまま買い物?
 もしこの運転手が悪い奴で、そのまま雪を拉致したらどうするか、例えば待っている間に寝返りを打ってシートから落ちたり、途中で目が覚めてここはどこだとパニックになったり…、

 無理無理無理無理。

 悪い想像が四方八方色んなシチュエーションで一気に広がって、一度ベッドに寝かせてから歩いて来ればいいと即決した。

 雪のワンルームマンションから角を曲がって直ぐのところにコンビニがあったのはラッキーだった。


 『寒…』


 完全に酔いが醒めて、指先が冷たくなる。



 そんな背景から早足になり、色んな意味で温もりを求めて部屋に戻った俺を、思いがけない光景が待ち構えていた。




 『…――――――誘惑の仕方って、他にもっとあると思うんだよね…』





 部屋の間取りはワンルーム。
 奥の壁にベッドとそれより少しだけ高さのあるデスクが並び、入って右がキッチンで、左に行けばトイレとバスルーム。
 ユニットじゃないところが売りの物件ってとこかな。
 広さは無いけれど、狭いわけでもない。

 雪の見た目だと、花柄だとかレースだとか、そんな小物があちこちにあるピンク色の部屋がイメージだったけれど、白のデスクからベッドのベージュブラウン、壁はうっすらウッド調で、すっきりさっぱりとしか表現できない印象だ。
 キッチンのアイテムもダークグリーンからメタリックゴールド。
 かなり落ち着いた家電や雑貨が並んでいる。


 何にしても、玄関から靴を脱いで室内に入れば、その全ては把握出来るわけで、


 『…はち切れてる…』

 何故かほとんど下着姿に見える雪がうつ伏せで寝転がっているベッドの隣で、輝度マックスで輝いている画面大きめのラップトップ。

 去年発売のモデルだ。
 そのマット的な画面に映っているのはいるのは、間違いなく男女の結合部の描画――――――しかも、パッと見は眉間を寄せ、じっくり眺めてようやく気が付くくらいの超どアップ。
 まさに、はち切れんばかりに膨れ上がったサマで描かれている男のアソコと、それを完全に飲み込んでいる女のアソコ。


 『…』

 持っていた袋を椅子に置いて、ベッドの上で穏やかな寝息を立てて眠っている雪をチラリと見た後、マウスに触れる。
 くるくるスクロールで画面を下ろして、


 『…ぅわ、処女なのに挿入3コマでイキまくり。さすが漫画』


 そんな女の子が相手なら楽でいいね、このヒーロー。
 でも現実はそう甘くないんだよ。
 初めての子をここまでイカせるのは厳しいんじゃないかな。
 それなりに経験がある子でも、よっぽど中を仕込まれてないと無理だからね。
 特にこういう痙攣チックなイキ方は――――――、


 …じゃなくて、


 『一体何読んでんのかなぁ、雪ちゃんは』


 タクシーから降りた後、部屋番号をスムーズに聞けたのが奇跡に近いくらい、半分はすっかり夢の中にいた雪からコートだけをどうにか脱がせてやっとベッドに眠らせたのが三十分くらい前の話。

 しばらく寝顔を見守って、身動きしない事を確認したうえでコンビニへと出かけた時、このPCが起きてるなんて気づかなかった。
 それはつまり、俺がいなくなった後にPCの電源を入れてこのページをわざわざ開いたわけだよね、雪ちゃん。


 これは誘ってるの?
 完全に誘われてるの?
 俺誘われちゃってるの?


 合意の太鼓判を押された気になってるんだけど。


 『酷い恰好――――――』

 ベッドの上の雪を改めて見れば、パンツからお尻が半分はみ出してて、そこから伸びる脚が白くてやばいし、ウエストから胸の辺りにかけてのラインは細身なのに、中途半端に上げられたブラに潰された通称下乳から予測すると、かなりボリュームがありそう。

 こんな感じで、雪のこの姿だけで誘惑としてはもう十分なんだけど、もしかしてこれって俺に対してのハードル?

 最低でもこれくらいはあたしをイカせてよねっていう難易度を示しているとか?
 僅かに混乱しかけた頭を軽く振りながら再びPCに目を戻しかけ、俺はその傍らに置かれたA4用紙に気が付いた。


 『シチュエーションリスト…?』

 with王子。



 『…俺?』


 勘違いしかけて、けれど直ぐに違うと気付く。

 タスクに開かれた裏夢リレー小説サイト。
 アップロードソフトとエディタがあれば何となく理解出来る。
 独自ドメインまで取得してるのか。

 …サークル?


 そして漫画は、どうやら仲間の一人が描いたものらしく、王子に監禁凌辱されるヒロインの話らしい。


 それにしても――――――、


 『フェラからスパンキング、スカトロ動画鑑賞…――――――かと思えばバードキス百回にコスプレ目隠し、エトセトラ…。この王子、性癖広すぎ』


 一笑に付す、って感じで冷静な自分を演出してみたけれど、すみません。
 反応するのは男の性。

 緩む口元を引き締める事も出来ないまま、腕時計を外す。

 デスクにそれをコトリと置いて雪に近づこうとしたタイミングで、鳩時計のような音がPCから一声鳴り響いた。
 メールソフトがタスクバーで点滅している。

 『んんん、ぅにゅう、ひゃーい』

 その音を切っ掛けに動き出した雪に、俺がいない間にも同じようにメールが来て、添付されていたのがあの漫画だったんだろう推測した。
 課題じゃくて良かった、うん。


 『…あれ? 王子でしゅか?』

 肘を支えに上半身を少しだけ起こした雪が首を傾げる。
 この童顔っぽい顔に、首から下のエロい身体。

 『うん。――――――雪、お水飲む?』
 『おみじゅはいいでしゅ。ぎゅうがいいでしゅ』

 手を伸ばされて、素肌の香りが近づけば思考も理性も飛びそうになる。
 目の前に、ブラを脱ぎだしたエサがあるんですけど。


 『んん、王子ぃ』

 首に両腕を回されて、その勢いで俺達はベッドに倒れこんだ。

 『雪…』

 ちょうど俺の右腕が雪の首の下に入り、

 『王子ぃ…』

 雪の片脚が俺の腰に乗ってくる。


 まあ、今日は食べるのが目的の一つではあったから、この展開は大歓迎なわけで――――――、

 『雪…』


 乱れた髪を整えるようにしながら額からキスを仕掛けようとして、


 『…――――――雪?』


 訝しんで覗き込めば、お姫様はすうすうと寝息を立てている事に気が付いた。




 ――――――
 ――――


 『…ん…』


 ふ――――――と。

 とてつもなく甘い感覚が全身をざわつかせた事に、意識が戻った。


 なんだか久しぶりに深く寝入った気がする。


 今何時…――――――って、


 『あれ…?』


 眠っていた…?


 混乱しながらも、頭上のいつものポジションにスマホはあって、見ればまだ午前四時を過ぎたばかり。


 『…ここ…は――――――…』


 温もりを持つシーツが頬や肩に馴染んで心地いいのに、いつもと肌触りが違う気がして、薄っぺらいクエスチョンマークが頭の中をひらりと舞う。


 ――――――の割に、


 『ぁう…、え?』


 俺のムスコは、恐ろしいくらいはっきりとした快楽に包まれていて、


 『ちょ、…くはッ』


 根本から強い力で吸いあげられたかと思えば、今度はチロチロと擽るような感覚に弄ばれて、


 初めて見る天井。
 壁紙の色、――――――そわそわと微かに動く布団の柄と…、



 『…雪、何してるの?』


 肘を支えに上身を起こして股間を見れば、眠りに落ちる寸前まで、俺が撫でていた筈の薄茶の髪がリズムよく上下に跳ねている謎な風景。


 『おうひ、おひましたは?』

 微かに鼻息を弾ませ、潤んだ上目で俺を見ながら、唇や舌が絶妙なラインを愛撫してくる。


 『待って、ゆ、――――――ぁ』


 なんだこの手技《テクニック》。


 『おうじのぉ〜、ふふふ〜ん』

 歌にでもしそうなくらい楽しそうに微笑んだ雪の口から、たっぷりの唾液が先の丸みに落とされた。
 根本へと垂れていく銀糸はまだ唇に繋がっていて、それが切れる前に窪みに舌先を添えた雪のうっとりとした眼差し、陶芸でもするような滑らかな両の手の動き、そして齎されるぐちゅぐちゅという淫靡な音――――――。


 『ぁ』

 思わず拳を握る。


 やばい、このままじゃイかされる――――――。


 『イクえしゅか? 雪のお口にだしましゅか?』


 どこのナンバー嬢だよ、ったく。

 可愛いのにこんなエロいとか、お得感が果てしない…。


 『…雪、俺にもちょうだい?』
 『ひゃい?』


 その言葉に漸く動きを止めた雪は、ちゅぽんと音を立てて口を開けたまま俺を見た。

 『何をでしゅか?』
 『下着脱いで、雪のちょうだい』

 仰向けのまま、天井に向けて舌を出して動かせば、意味を理解したのか雪の目がキラキラと輝いた。


 『初めてれしゅ』
 『そうなの?』


 クンニしない男とか本当にいるんだな。

 と考えられたのは一瞬、


 『――――――え?』


 下着をすぱーんと脱いだ雪が、


 『雪、いっきまーしゅ』」
 『え?』

 片手をあげて宣言すると、俺のモノを目掛けて腰を下ろしてきて、


 『騎乗位!? じゃなくて』


 喜びが無かったとは言わないけれど、俺は迷わず、全裸の雪を腰から抱えるように両腕で捕らえて、そのままベッドに押し倒した。

 『だぁめ』
 『…ダメ…でしゅか?』
 『そ』
 『…な…なんで? 雪はダメでしゅか?』


 じわじわと、雪の目に涙が溜まる。

 どうしよう、この子。
 外での深酒はマジで禁止。


 『雪はダメじゃない』
 『うぅぅ…』

 柔らかなクセッ毛の髪がシーツに短く広がって、無防備に俺を見つめるその姿は、とても大切な存在として目に映った。

 『俺、まだゴムしてないでしょ? 生はダメ』
 『…でも、生の方がおっきく感じて気持ちいいって…』
 『…雪…』


 こんな可愛い生き物つかまえて、クンニしなくてゴムもしないなんて、

 …雪の過去に、独り善がりで無責任な男像しか見当たらないんだけど…。


 『ゴム無しは、結婚してからね』
 『結婚…でしゅか?』
 『うん』
 『…王子は、雪と結婚するでしゅか?』
 『え?』


 ――――――あ、まあ、この話しの流れじゃあ、こうくる…よね。


 『それもいいかもね』


 何を考えるでもなく、軽口で応えれば――――――、


 『嬉しい…ッ』


 雪は、まるで新雪の中から芽吹いた小さな花のような愛らしさで泣き笑った。


 『家族でしゅね』
 『…雪…』
 『王子と二人でしゅ…。じゅっと、じゅうううっと』
 『…』
 『もう、一人じゃないでしゅ…』


 伸ばされた雪の手が、俺の頬に触れて暖かい…。


 ――――――どうして、俺は雪と出会ったんだろう。


 『…雪』


 目の前の雪が、溶けてしまいそうに揺れ始めた。


 言葉に出来ない思いが、内側からにじみ出てくる。


 『王子…?』
 『雪…』


 ああ、これは貰い泣きだ。


 だって、何で涙が溢れるのか、正しく説明できる要素が何もない。



 ただ、

 ただ――――――、



 『雪と家族になるのは、幸せそうって、思った』

 『王子…ッ』


 ギュっと、雪が抱き着いてくる。

 俺も、ギュっと強く抱き返して、それから雪の耳に音を立ててキスをした。


 丁寧に耳の形をなぞって、それから首筋、そして反対の耳へ。

 『ん、…王子ぃ』
 『たくみ

 人差し指で唇に触れれば、

 『たく、み』

 俺の名前に動く事すら愛しさで胸が満ちる。


 『してもいい? 雪』

 酔っぱらった女の子になんて事を、と。
 佑《たすく》やいずみが知ったら怒られるかもしれないけれど、


 『はい。雪をお嫁しゃんにしてくだしゃい』


 これに勝てる理性、持ってなくていいんじゃないかと、開き直るのは早かった。



 初めての雪とのキスは、お酒の香りが混ざる淫靡なもので、


 『ふ…ぁ、気持ちい、ふ』

 細身の割にはたっぷりある胸への俺の愛撫も、


 『たく、み、それ、気持ち、ゃ、すご…あんッ』

 舌の動きに腰をくねらせる雪の姿態も、


 『むううう、雪もしゅるぅ』
 『上においで』
 『…気持ち、でしゅか? 王子』
 『たくみ
 『たくみ、たくみの、おっき、でしゅ』
 『雪は狭いね…、壊しちゃいそう』
 『…覚えてないでしゅ』


 最後のセックスが結構前だったって意味かな…?

 『ゆっくりしようね』
 『はい…、ぁ』

 とにかく何もかもが、雪と二人だからしっくりくる、みたいな、そんな時間の積み重ね。


 そしてこの積み重ねて向かう先に、雪との二人での未来があるのは、


 ――――――うん。

 悪くない。




 『挿入《い》れるよ、雪』



 ちゃんとゴムを付けて、最後に意思を確かめるように何度も雪にキスをして、



 『雪…』


 膝で立ち、雪がもう他の誰にも見せないだろう恰好を見下ろしながら、


 『きつかったら言って』



 求めていた雪の中へと、先を押し付けて沈みこませた瞬間――――――、




 『いったああああああああああい』



 『…へ?』



 それはもう、もしかしたら通報レベルの大きな悲鳴が、このワンルームの部屋中に乱反射して木霊した。








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