小説:ColorChange


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愛に形はありますか?
《 Acting.by アキラ 》

 ジョニー企画で、樋口さんに拉致られてきたルビを初めて見た時、どこかで見た事があるような気がした。

 ヒマワリが咲いたような網膜の模様が際立つ明るいトパーズの瞳。
 薄茶の髪の柔らかそうな質感。
 色づいた唇のその形。

 そして、綿菓子のようなそのルビの見た目とは正反対の眼力が隠されている、あの目元。

 どこかで見た事があると、確かにそう思った。


 ケヴィン・モーリスだったのか――――。


 言われて見ればそうかと思う。
 いや、なぜ気付かなかったのかと不思議にも思う。

 ケヴィン・モーリスが醸し出すあの"冷静"と、
 本宮ルビが撒き散らすあの"麗静"――――。
 カラーも形も違って見えるけれど、内側に揺れるファイアーは同じだ。

 宝石の中に揺らめく虹のプリズム、人を惹きつける、本質からの滲み出るファイアー(輝き)―――。


 確かに、似ている――――。


 「最悪」


 ケリから目を逸らし、思わず漏らした言葉。
 ため息に近かった。

 視界の隅で、ピクリとケリの身体が微動したように思う。
 それでも、一度逸らした目を元に戻す事が出来なかった。

 今、ケリの眼を見たら俺はきっと―――・・・

 足元を、そんな暗闇に掬われそうになった時、


 ピルルル――――、


 誰かの携帯が鳴った。

 「あ、すみません、・・・はい」

 応答したのは藤間。

 「ええ、そうです。わかりました。―――アキラさん」

 「ああ」


 呼び出された事に内心ホッとして、俺は立ちあがった。
 幾つかの顔が釣られて上を向く。
 状況を読み込もうとしている探り顔のミッシェル。

 「・・・天城さん?」

 少し、―――いや、かなりの不信を含ませた声音で、トーマが厳しい目線で俺を見つめている。
 何が言いたいかは、理解できているつもりだ。

 俯いたままのケリ。
 すぐにでも抱きしめてやりたい想いも確かにあるが、この感情を抱えたままではダメだと思った。


 「――――20分で終わらせてくる」

 通りすがりに、ケリの頭に手を置いて告げた。
 その漆黒の瞳を、見る事もできないままの子供染みた態度。


 ―――情けない事に、これが今の俺の精一杯だった。








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