小説:ColorChange


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愛に形はありますか?
《 Special-Act.by ライアン 》

 【あんた――――、ケリじゃなくて、・・・誰を見てた?】



 ピシリ、

 アキラが投下した爆弾は、本人が考えている以上に、現状の基盤に甚大な亀裂を入れていた。
 斯く言う私の足元からも、その亀裂の上に立っているという現状に震えが駆け上がってくる。

 この瞬間、いつかケリを地獄に突き落とすという役目を担っていた、"傍観者"という罪への恐怖が、まるで実体化したように背後から音も無く広がってきて、私を襲い、暗闇へと絡め取る。
 今夜、アキラとケリの関係をはっきりと示す事が出来れば、それを見届けてあわよくばその罪から逃げきろうと思っていた私は、そんな都合のいい未来への階段が轟音と共に崩れ落ちるのを、息をとめて見つめていた。


 【・・・どういう意味?】

 ぼんやりと、アキラの言葉の意味を考え出したケリ。
 発言に対する後悔が見受けられるアキラと、現状に苛まれる私の目線が合う。

 【・・・】

 今、彼女にかけるべき言葉を、私は持ち合わせてはいない。
 目を逸らすしか出来なかった。


 (ケヴィン・・・)

 彼に至っては茫然自失の状態で、琥珀の瞳からは先ほどまでの光は失われ、唇が何かを綴っている。


 【ケヴィン? どうしたの?】

 近くにいたエリザベスが興味津津でケヴィンの言葉に耳を傾けていて、

 【リズ、やめなさい】

 私に制されて肩をすくめる。
 そんなやりとりを余所に、

 【僕は、・・・】


 ケリを見ているはずのケヴィンの眼が、迷うように虚ろっていた。
 彼女の向こうに見える、"決して自分を愛さない男"を見つめ、愛し続けてきたケヴィン。

 アキラによって再現された、出会ったばかりの頃のケリが浮かべていた純粋な笑顔を目の当たりにして、思い出と現実が、彼の目の前で交錯しているような気がした。

 私達には、共有が出来ない幻の景色。
 ケヴィンの美しい肢体が震えているのが何よりの証拠だと思う。
 彼の前にはきっと、チョコレートブラウンの髪をした、優しいあの男が笑っているはずだった。

 ケリを見つめて――――。


 【・・・シン】

 泣きそうなほど、切ない声でケヴィンが紡いだその名前に、


 【・・・え?】

 反応したのは、アキラの腕の中にいたケリだった。








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