小説:クロムの蕾


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PINKISH
BE DYED


 「頑張って、ついてきてね―――――?」


 本宮君のその言葉に、どんな意味が含まれているのか。
 さっきのキスの流れからするなら、その"続き"も……、

 って、事だよね……?

 午後一番の授業が進む中、教室とあたしの頭の中の色の違いが明白過ぎて、あまりの恥ずかしさに机にうつ伏せる。
 自分の熱い息が、あたった机から跳ね返ってくると、反射的に本宮君の吐息を思い出した。


 ……健ちゃんとしたキスとは全然違う……。

 そっと、指で唇に触れた。
 本宮君の、差し込まれてきた舌の熱さを、まだ覚えている。

 キスの最中は、心ごと、体ごと、全部どこかへもっていかれてしまいそうだった―――――。

 本宮君の唇があたしの唇を挟むたび、
 舌先が絡むたび、呑み込まれてしまいそうなほどに求めてくる強烈さに、逆らわないようにするだけで精一杯。
 その後の、熱を孕んだような本宮君のトパーズの瞳は本当に綺麗で、激しすぎるキスに驚いていた筈なのに、本当に大好きって、ただただ、実感してしまった。

 午後の授業には出られないみたいだったから、昼休み終了のチャイムを切っ掛けに、逃げるようにして屋上を後にしてきたけれど、


 ――――もっとちゃんと話した方が良かったのかな……?


 『好き……』


 告白したというよりは、


 『言って?』

 本宮君にただ言わされてしまったあのセリフ。


 その答えは、


 『いい子』


 そして、

 『それじゃあ、先週の話は、無しでいい?』

 それって、付き合っている振りを止める話を、……無しにするって事だよね……?

 つまり今も、あたしは仮カノ状態で、あたしが本宮君を好きだって事が露呈しただけの、そういう状況。


 ―――――あ、

 あれ?


 もしかしてあたし、本宮君の"愛人"の仲間入りを果たしちゃ、―――――った……?

 つまり……、セ、セフレ候補……?

 あたしが―――――?


 『なるべく自制して、壊さないように努力はするけど、頑張って、ついてきてね?』


 やっぱりそれって、そういう意味だよね……?
 あたし自身の事なのに、現実感がある様な無いような――――――、


 っていうか……、良し悪しで考えると、やっぱりイケナイ事……?

 頷いたのって、―――――早まった、のかな……?


 考えが、右往左往してあたしの意志がどこにも存在しない。
 自分でもよく理解出来ていない状況に、思考が煮えたぎりそうになってくる。

 「……」

 誰かに相談……、そう考えると、思わず探してしまうその存在はやっぱり一人で、

 (健ちゃん、戻ってなかったんだ……)

 空いている席を見て不安が募り、あたしはまた、深いため息をついた。








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