「やだ、やめ」 さっきまでとは違う。 猿ぐつわが外されているから、言いたくても言えなかった拒否の言葉が、喜びのように放たれる。 言える、 言えるんだ、 今なら、 「お願い、やめて!」 「うるせぇ」 「やめてください!!」 「おい」 カズイが、鋭い目線をあたしに落とした。 「先に口に突っ込まれてぇのか?」 「!」 「暴れると、初日みたいに縛り上げるぞ」 「あ・・・!」 あたしは、洪水のように蘇ってきたあの初めての日の記憶から、そのパーツを拾い上げる。 ずっと、後ろ手に縛られていた。 カズイが体重をかけてあたしの上に乗る間も、手首は痺れて擦れて、かなり痛くて・・・。 あの時、手首にはたくさんの擦り傷ができて、確か、血も滲んでた。 殴られたりはなかったけど、全身で押さえつけられて、無理やりされたんだ。 何度も、何度も――――――。 二日目に入る頃には、抵抗する気力も無くて、出る声も、投げやりに垂れ流しだった。 それを思い出した体が、硬直して動きを止める。 「・・・いい子だ」 脱力したたあたしの上で、カズイが鼻で笑った。 金髪の毛先があたしの頬をくすぐって、 ああ、キス、してるんだ・・・。 これがファーストキス? どうだっけ・・・、 覚えてない。 「・・・はぅ」 ちゅちゅ、ちゅちゅ、 舌が絡んで、舌を吸われて、唾液が混ざる音がする。 あたしは、まるで人形のように、抵抗はせず、ただ口を開けて、カズイの舌にされるがままに舐められてた。 嫌悪感はふつふつと湧いていたけれど、それ以上に、縛られたり、猿ぐつわされたりという記憶の恐怖が勝っていた。 時間をかけてあたしの全身を動物みたいに舐めまくったカズイは、手慣れた感じでゴムをつけて、 あたしの中に、ゆっくりと挿入(はい)ってくる。 「あ」 なんで? 嫌だ・・・、 嫌だ――――――! さっきまでは、我慢できた。 できたのに、 「あぁ、ぅ、はぁ、んぁ」 体を擽るような快感が、 あたしを支配するカズイによって齎される行為の結果の快楽が、どんなに声を抑えようとしても、 「ああ、ん、あッ」 「余計なこと考えずにイケよ」 行為の激しさと反比例するような単調な声音。 (イク? ・・・なに?) 戸惑っている内に、 「あ、あぁ!」 大波のような痺れが、脳の奥からつま先まで駆け抜ける。 自分の体なのに、制御できないほど痙攣して、 「く・・・ッ」 カズイが、苦しそうな声を出した。 どうしてこんなに・・・、 どうしてこんなに気持ちいいの? 心はこんなに拒否しているのに、体が、まるで別のものみたい。 出てしまう高い声を認めたくない。 認めたくない。 認めたくない! 認めたくない―――――――! |