「・・・あれ? 和以君?」 「――――――ああ、花村か」 「珍しいね、こんな女っ気の多いパーティに和以君が参加するなんて」 「お袋の代理で挨拶だけだ。10分経ったしそろそろ帰ろうと思っていた。――――――お前の方が珍しいな」 「え?」 「一人か?」 「あ、――――――まぁね」 「・・・何かあったのか? 体調不良ならお前が傍を離れるワケないし――――――」 「・・・」 「・・・なんだ、そういう事か?」 「あれ? 意外に勘がいいね、和以君」 「うちの姉貴も、最近二人目が出来たと大騒ぎだったからな」 「そうなんだ。おめでとう」 「いや、悪い、出遅れた。――――――おめでとう。奥さんにも伝えておいてくれ」 「うん」 「・・・どうした? 手放しで満面って笑みじゃねぇな」 「う〜ん」 「嬉しくねぇってワケじゃねぇよな。お前に限って」 「そりゃあね。でも、――――――男親ってこんなものかなって思うよね」 「ん?」 「まだ由菜が言うような愛情みたいなものが湧いてこないんだよねぇ」 「愛情?」 「そ。母性が滲み出るような、愛しい、とか、可愛い、とか」 「・・・まぁ、男親は生まれてから始まるって義兄も言ってたか」 「それとも違うかなぁ。なんていうか、子供が出来たって聞いた時、嬉しかった事に間違いはないんだけど、明らかに由菜とは違う感情が走ってたんだよね」 「・・・」 「由菜には絶対に言えないけど、赤ちゃんが出来て嬉しいってより、僕と由菜の遺伝子が混ざった成果物がそこにあるっていうか」 「・・・おい、花村」 「何が嬉しかったかって、由菜を繋ぐ鎖がより強固になった事と、それが僕と由菜を結ぶ新たな鎖だって事で涙がじんわり出たけど、それにプラスしてさ、――――――いつだって僕が願っていた、由菜と一つになれればいいって、その結晶がそこにあるなんて、――――――凄いよね」 「・・・ふ」 「え、なに? 和以君」 「ちゃんと嬉しそうだよ」 「え?」 「子供の事を語るお前の顔は、もう立派に親の顔だ」 「・・・そう見える?」 「ああ」 「・・・うん。なんか安心した。由菜に会いたくなっちゃったかも。僕も今夜は義理だし、早く引き上げようかな」 「車は?」 「帰しちゃったから、乗せてってくれる?」 「俺は構わないが・・・」 「僕も構わないよ」 「――――――そうか」 「和以君さ、結婚式の時にも言ったけど、気を遣い過ぎ。竜生組背負ってはいるけど、灯コーポレーションという企業のトップ陣でもあるんだからさ」 「・・・ああ」 「吉川貿易も、そんな事で探られる腹は浅いところには持ってないし。――――――あ、由菜に会ってく? 寄るなら先に電話しないと」 「いや、生まれてからお祝いに行く事にするよ。――――――まだどっちか判ってねぇか?」 「男か女かって意味?」 「ああ」 「周りの意見を参考にすると、男」 「そうか」 「僕としては、由菜の取り合いになる気がするから、出来れば由菜にそっくりな女の子がいいかな、とは思ってるんだけどね」 「・・・」 「あれ? 同意的な笑みだね、和以君」 「ああ、――――――まぁ」 「やっぱそうだよね」 「――――――まぁ、そうだな。もし生まれてきた娘が、惚れた女にそっくりなら・・・、かなりやべぇかもな」 「うん・・・」 「・・・」 「・・・冗談抜きでヤバそう。どうしよう、和以君」 「俺に聞くな」 「煽っておいて、酷いよね」 「――――――ま、奥さんに愛想を尽かされない程度にな」 「・・・そうだね。善処する」 イチ香(カ)より一言:がんばろうか、水蓮(^o^;) そして和以もいつか、――――――ね^^ |