小説:SCENE


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「月光は降り積もる」より
和以×氷川の爺さん

 「よぉ、和以」

 「――――――爺さんか」

 「久しぶりだな」

 「ああ。・・・相変わらず"元気そう"だな」

 「ん? ああ、あの女か。不幸な女を金のある所に回してやるのもヤクザの仕事だ。その仕込み中だよ」

 「"仕込み"ねぇ?」

 「ふん。生意気な顔をするようになりやがって。――――――で? 調子はどうだ?」

 「ああ、――――――まぁまぁだよ」

 「仕事そっちじゃねぇ」

 「あ?」

 「こっちだッ!」

 「ぐあッ」

 「お、結構イイ声で啼くじゃねぇか、和以」

 「掴むなッ、クソジジィ」

 「ったくよぉ、そんな立派なモン持ってて使わねぇってな。宝の持ち腐れってのはこの事だよ」

 「・・・」

 「和以よ」

 「・・・なんだよ」

 「女ってのは柔らかいだろ?」

 「・・・」

 「突き挿して突き挿して突き挿して突き挿して、――――――そんな無茶で我武者羅な男の激情を、その柔ぇ身体で必死に受け止めてくれるのが女ってヤツだ」

 「・・・ああ」

 「怒りってのは大抵は向ける場所が無ぇ。暴力にしてすっきりする所まで表そうと思えば弱ぇヤツが血を見るのが普通だ」

 「・・・」

 「悔しさってのも向ける場所が無ぇ。寂しさも、恨みとか、――――――堕ちてる時もそうだな」

 「・・・」

 「けどな。――――――セックスで得る快楽ってのには一応の終わりがある。体という邪魔が有るから、感情の代替にしたイチモツで女を突き刺す心配も無ぇ。どんなに暴力的に中に挿し込もうが、ちゃんと可愛がってやりゃあ、女ってのはそれを丸呑みしてくれるしな」

 「・・・」

 「つまり、女に打ち付けて射精すれば、それをゴールにして上手く片付く感情もあるって事だ」

 「・・・爺さん」

 「お前も、経験あるだろ?」

 「――――――あの女、そうするように仕向けたのは、やっぱりあんたか爺さん」

 「まあな。氷川うちの組員の娘だ。早くに父親ソイツが死んじまって、母一人娘一人でシマ離れて普通に生きてた女だ」

 「・・・」

 「女にもな、ときどき矜持プライドの強ぇヤツがいる。ただで面倒を見られるって事にどうしても自分を許せねぇって女がな。アレもその手の女だった。病気で母親が倒れた時、父親の年金代わりだと纏まった金を送ってやったら、組の仕事をさせてくれと屋敷に現れた」

 「・・・」

 「頑固さに負けたってのもあるが、組関係の女で、上役の家族でも無い限り、夜に染まってない女は稀だ。和摩に相談して、万が一のお前の為にとっておく事にした。ヤクザのせがれってのは色んな意味で世間の辛酸を舐めるのが早ぇからな。もちろん出番が無いならそれに越した事は無ぇが、・・・けどもし、お前がそういう女を必要とする時がきたらってな」

 「・・・」

 「まだ跡目と決める前のお前にそこまでのお膳立てはいい気はしねぇだろうし、悪ぃとは思ったが、――――――男の最初の女ってのは大事なんだ。特にこの世界の男が、感情の憤りで抱くことになる女は重要だ。どんな扱いを受けても良しと出来る女。遺恨にしない女。――――――・・・お前、惚れた女を、あいつにしたのと同じように抱けるか?」

 「・・・いや」

 「それが全ての答えだ」

 「・・・」

 「そんな抱き方をした女がいたから、惚れた女の抱き方が解る。操立てて挿さねぇのもアリだろうが、そんな男の身勝手さを毅然と受け止める役割の女がこの裏の世界にはいるって事を、忘れねぇのもお前の仕事だ」

 「ああ、判ってる」

 「潰れそうになったらいつでも言え。死んでも口を割らねぇ女を用意してやるよ」

 「・・・ああ」

 「――――――ふん。澄ました顔しやがって」

 「・・・勘弁してくれ、爺さん」

 「ったく、女の事になると絡み甲斐の無ぇヤツだ」

 「・・・チッ」

 「――――――和以」

 「あ?」

 「結婚したらしいぞ」

 「・・・?」

 「氷川くみ宛に葉書がきてた。元気そうなお袋さんと優しそうな旦那と、腹膨らませた女の、幸せそうな家族写真のヤツ」

 「・・・」

 「連絡先は一切書かれてねぇ。多分、向こうなりのケジメってヤツなんだろう」

 「そうか・・・」

 「――――――なんだ、久しぶりにいい顔で笑ったな」

 「・・・自分に関わった女が幸せになってるっては、悪くねぇ」

 「確かに、――――――そうだな」

 「ああ。・・・悪くねぇ。知らせてくれてサンキュ」

 「・・・離れてても、男を育てられる女ってのも悪くねぇよ」

 「爺さん・・・」

 「早く、帰ってくるといいな」

 「――――――ああ」





 イチ香(カ)より一言:あと2年(。>0<。) 和以頑張れ!








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