「シタんだ?」 「え・・・?」 「シタんでしょ」 「真・・・真由ちゃん」 「あ、その顔、今どうやって誤魔化そうか考えたわね? このあたしに?」 「えっと・・・」 「この状況から話を逸らすとか、絶対無理だから」 「う・・・」 「ほら、観念して吐きなさい。シタんでしょ?」 「し・・・」 「し?」 「・・・しました」 「やっぱりね〜。あんたよりもあの男よ。さっき玄関で会った時、ごゆっくり――――――なんて、あんな気の利いた挨拶が出るくらいご機嫌とか、解りやすすぎ! 幸せダダ漏れ。なにあの浮かれ切った顔。あれでヤクザ家業が務まるわけ?」 「・・・聖さんが、威厳がなくて困るって言ってた・・・かな」 「だと思うわ。締まりなさすぎ」 「・・・」 「で?」 「え?」 「いつよ?」 「・・・えっと・・・」 「あ、その指輪」 「あ」 「もしかして先週のあんたの誕生日?」 「・・・うん」 「ははーん、満を持して、誕生日イベントにぶつけてきたわけか。うわ〜、なんか、ベタベタに盛り上がった感があるね」 「・・・真由ちゃん、なんか、もう恥ずかしすぎるから」 「何言ってんの、これからでしょ」 「真由ちゃん・・・」 「って言うか、あいつ。久しぶりにセックスして、ちゃんと一回で終わったんでしょうね?」 「ッ・・・」 「はぁ? ちょっと結奈、何その反応」 「えっと・・・」 「結奈。この手の話で、あたしから逃れられるなんて思ってないよね?」 「あの・・・」 「何回?」 「・・・」 「・・・何? 挙手? お手上げ?」 「・・・」 「は? 5回?」 「・・・」 「本気で5回って意味?」 「・・・はい」 「ああああぁんのくそバカ男!」 「真、真由ちゃん・・・落ち着いてッ」 「これが落ち着いていられるかってのよ! あんただって7年もしてなかったんだからセカンドバージンでしょうが! ったく、病み上がりつかまえて何してんの、あの男!」 「・・・えっと」 「結奈、あんた身体大丈夫だったの?」 「あ、うん。それはね、全然平気」 「ほんとに?」 「うん。ほんと」 「ほんとに? あいつ、一度でも 「あ、うん。あたしも、ちょっと覚悟してたんだけど、なんていうか、――――――和以、凄くゆっくりしてくれたの」 「ゆっくり・・・? スローセックスって事?」 「そう言うのかな? ギュっとして、ただ一つになって体温をじっくり共有して、いつまでも繋がっていたいって、幸せで泣きたくなるくらい、最後までね、和以、ずっと優しかった」 「・・・」 「昔と・・・その・・・、あたしが知ってるエッチとは、ぜんぜん違ってた」 「あ〜、あの頃のあんた、体力極限までつき合わされてた感じだったもんね。何を説明されなくても、あいつがガツガツしてるって事だけは、リアルに想像ついてたわよ」 「ふふ」 「けど、いくらゆっくりって言ってもさ、する? 普通、5回とか」 「うーん・・・」 「・・・」 「・・・うーん」 「――――――もういいわ、何も応えなくて」 「え?」 「なんか、なんだかんだで納得して幸せそうだもん、あんた」 「・・・」 「昔、あいつに熱上げてアレコレしてた時よりも、ずっといい 「・・・うん。そうだね」 「え?」 「それはね、間違いないの」 「・・・」 「あたし、和以に触れられる度に、――――――抱きしめられる度にね、・・・生まれてきて良かったって」 「・・・」 「あたしがあたしで良かったって、本当に心から思えるんだよ」 「結奈・・・」 「幸せだよ?」 「・・・」 「色んな事があったけど、これからもあるのかもしれないけれど、ほんとに幸せ」 「・・・ぅん」 「だから、泣かないで、真由ちゃん」 「・・・泣いてないわよ」 「真由ちゃんにもね、ずっと伝えたかった」 「・・・」 「こうして、あたしの為に怒ったり泣いたりしてくれる真由ちゃんがずっと友達でいてくれて、今も昔も、あたし、本当に幸せ」 「・・・」 「幸せだよ?」 「・・・結奈のバカ」 「うん」 「バカ・・・」 「うん」 「本当に、バカなんだから」 「うん」 「でも、――――――あんたが幸せで、あたしも嬉しい」 「真由ちゃん」 「嬉しいよ」 「うん!」 「でも――――――それとこれとは話は別。あいつ、レベッカと二人でしっかりお灸を据えてやるんだから」 |