小説:その赤い実を食べたなら


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モミの木、のような恋

 知紗に恋をしている――――――。

 そう自覚したら、自分でもおかしくなるくらい、ますます知紗の事が好きになった。

 自分の意思表示をまだ押し出してこない知紗は、俺が提案するデートプランに否を言わない。

 俺のプランは元々映画が好きだから、どうしてもサイクルがそれに偏って、しかもヒューマンドラマ中心。
 勝手にチケットを買って誘っているけど、意外に、泣いたり機嫌を悪くしたりして、映画鑑賞に対する反応があるのが面白い。

 時々、俺がハッとする程に綺麗な目で、キャラクターに対する自分の考えをポロリと零したりして、それが、凄く俺の好みだったり、感心させられたり、興味をそそられたりして、

 知紗と一緒に、DVDを観ながらずっと抱き合って休日を過ごせたらどんなに幸せだろうと、焦がれるように考えたりする。

 ・・・もちろん、裸で。

 けど、

 『・・・知紗は意外なところに反応するから面白いね』

 会話はなるべく健全に。
 キスどころか、男と付き合うのすら初めてという知紗に、引かれないように嫌われないように、じっくりと時間をかけてコトを運びたい。

 こんなに、慎重に女の子を扱うのは、――――――俺も初めてだ。

 『――――――篤先輩の映画のチョイスも、いつも意外です・・・』

 『そんな顔をして俺を煽れるようになったのも、意外』

 話すだけでこんな風に胸が痛むのも、力任せに抱き締めたら壊してしまうんじゃないかと不安になる気持ちも、全部全部、知紗だけに感じる初めてのもので――――――、

 『篤先ぱ・・・』

 『キス、しよっか』

 でもキスだけは、

 恥ずかしそうにしながらも、知紗も許してくれているから――――――。



 啄むようなキスから、唇を舐め合うキスへ。

 舌の先を重ねるキスから、お互いの唾液を舐めとるキスへ――――――。



 『知紗、俺の事、好き?』

 何度だって、確認したい。

 『好きです、大好きです、先輩』

 知紗が震えるようにして紡ぐ言葉を、じんわりと胸に溜めこんで、

 『俺も好き。知紗、ほんと可愛い』

 愛しく、大切に、知紗を抱きしめる。

 会って、

 キスをして、

 好きだと何度も交わし合い、

 時々、手袋を忘れたと言って、俺のポケットで手を繋ぎ合ったまま温ろうとする小さな 画策 あまえ が、とてつもなく俺の心を満たしていって、



 ――――――毎日がスゲェ楽しかった。



 それでも、

 どんなに深いキスをして、強く抱きしめ合ったとしても、

 『・・・好きです、先輩』

 『知紗・・・』

 『好きなんです・・・』

 それだけを伝えるのに、顔をこれでもかというほど真っ赤にして、今にも泣き出しそうな目で必死に伝えて来る知紗に、多分、俺のペースに付き合わせてしまっているんだろうと、

 "知紗の全部が欲しい"

 その欲求はなかなか口に出せなくて、

 「――――――もうすぐクリスマスだね。とりあえずデートプランは立ててあるけど」

 クリスマスの2週間前。
 プレゼントのリサーチも始める必要があったから、敢えて切り出したこの会話。

 もし知紗が、クリスマスを切っ掛けに、俺と一線を越える覚悟を決められそうな反応があれば、当然遠慮なくご馳走になって、
まだ難しそうなら、今回は諦めて、バレンタインとかを次のポイントにする。

 イベントデーに拘るわけじゃないけど、"初めて"の知紗にとって、もしかしたら、大事なコトかもしれないから――――――。

 「ほんとですか? 嬉しいです」

 パッと輝いた知紗の顔に、反射的に笑みを返す。

 「良かった。知紗からリクエストはある?」

 「リクエスト・・・ですか?」

 「そ」

 イルミネーションが見たいとか、どんなプレゼントが欲しいとか、収穫があるとすればそんな内容かな、と身構えもせずに待っていた俺は、次の瞬間、椅子から落ちそうなくらい動揺した。

 「あたし、イヴは、――――――イヴは、先輩とずっと一緒にいたいです」

 「・・・・・・・・・え?」

 ――――――それって・・・、

 多分、俺の視線が、その真意を問いたくて、大いに疑問を投げていたんだと思う。



 「先輩と、・・・朝まで、一緒にいたいです・・・」

 今にも発火しそうなくらい真っ赤になった顔を俯けながらも、ちゃんと言葉にしてそう答えてくれた知紗。

 まさかの、知紗からのお誘い・・・。

 「あ、・・・俺の、部屋で、いいかな?」

 色んな事を誤魔化すように、髪をかきあげた俺の手が、震えているのがバレませんように――――――。

 「はいッ、――――――はい」

 何度も何度も頷く知紗を見て、

 「好きだよ、知紗」

 「・・・はい、あたしも、好きです」

 ずっと大事にしていこうって、俺の中で、そんな誓いのような気持が、自然に湧き上がってきた。





 イブ当日。

 クリスマスケーキは、知紗が手作りで準備してくれた。
 待ち合わせの場所で箱の中を見せて貰ったら、ピンク色のチョコでコーティングされた、二人で半分コすれば、一度で食べてしまえる大きさのケーキ。

 「ありがと。後で俺の部屋で食べよっか」

 「――――――はい」

 寒さのせいか、内側の熱のせいなのか、頬を染めて頷いた知紗の手から荷物を預かり、手を繋いでイルミネーションの中をゆっくりと歩いて、美織んに教えてもらった今一番女子に人気があるカフェでパスタを食べた。



 ――――――で、

 「入って」

 「お邪魔、します・・・」

 年末大掃除でもここまでした事ないってくらい、台所もユニットバスも綺麗に洗った俺の部屋。
 何となく、ベッドのシーツも新しいのが良よくて、久しぶりに新調した。

 「あの、ケーキ、」

 「うん。冷蔵庫にいれとく」

 俺の答えに、今は食べる気は無いという 意思 きぼう を見出したのか、知紗の喉が音を立てて上下する。

 「あの、これ、ここに置いててもいいですか?」

 「うん。――――――それだけで、殺風景な部屋でも、ちょっとクリスマスっぽくなるね」

 リースの代わりだと言って、ドライオレンジというヤツを松ぼっくりと一緒にリボンでくくったブーケみたいなアイテムを、知紗がラップトップの傍に置いたのを切っ掛けに、

 「知紗・・・」

 「あ」

 まだコートを着たままの体を、ギュッと抱き締める。
 部屋に入って、まだ5分も経ってない。
 ロクな会話もしてない。

 「せん、ぱい――――――」

 抑えきれなくなった俺は、男としては最後の最後に堪え性が無かったかもしれませんが、

 「知紗、ごめん、もう――――――」

 「・・・はい、・・・ぁ」

 立ったまま、知紗の唇にいつもの啄むようなキスをする。

 ・・・正直言って、それ目的で家に連れ帰ってきましたから、はい。

 少しずつ開いてきた知紗の唇の間に、俺の舌先をくぐらせる。

 キスは疑似セックス。
 女の子のアソコを探るのと同じだ。

 上顎を小刻みに攻める。
 唇の裏をねっとりと舐める。
 舌の裏にツボを探して、唾液が出る場所ポイントを探す。

 「ぁ、・・・ふ、せんぱ、・・・ぃ」

 「ち、・・・さ」

 付き合い始めて二か月と半分。

 俺のキスをずっと受け続けてきた知紗に、ずっと教えたかった俺からの愛撫。

 俺の唇だけに反応して欲しい。
 俺の指だけに喘いで欲しい。
 俺のモノだけで、啼いて欲しい――――――・・・。

 これから、この欲望を満たそうとしている俺の、理性と本能がギリギリのところで顔を突き合わせている。

 自分に言い聞かせるように進めていかないと、知紗の事をあっという間に食い散らかしてしまいそうだ。

 「知紗、――――――知紗」

 名前を呼んで、キスをして、知紗の着ていたブラウンのダッフルコート、襟のついたピンクのワンピースを脱がせて、次々に床に落としていく。

 予約セットしていた暖房は、部屋に着いた頃には既に効いていたけれど、裸になるとするとまた別の話で、

 「寒くない?」

 「大丈夫、です」

 下着だけになった知紗が首を振ったのを合図に、

 「きて」

 ベッドへと促して座らせる。

 「知紗、俺を見て」

 両腕で、ブラの柄さえも隠そうとする防御振り。

 ――――――けど、それで寄せられた谷間が、怖いくらいエロい。

 着痩せするタイプだったらしい知紗は、嬉しい誤算で、Dカップはありそうだ。

 直視したら、むしゃぶりつきたくなりそうだから、敢えて目を逸らしてるけど。

 「知紗、俺の目、見て」

 「せんぱい・・・」

 知紗の真っ黒い目が、ウルウルと俺を見つめている。

 「可愛い、知紗」

 「・・・」

 「全部、俺のものにしたい」

 「――――――はい」

 「腕、自分で解ける?」

 「・・・はい」

 戸惑った表情を見せながらも、知紗は、クロスさせていた両腕を従順に解いた。

 真新しいブラと、お揃いのショーツ。

 きっと、この俺との 聖夜 イヴ の為に用意したんだと思うと、嬉しさで胸がいっぱいになった。

 「なるべく、気持ちよく出来るようにする」

 そう言って、俺が知紗の額にキスをすると、

 「はい。よろしく、お願いします」

 「・・・」

 よろしくされちゃったんだけど。

 「――――――ヤバイ。超可愛い、知紗」

 暴走しそうになる欲望をどうにか抑え込んで、俺は、背中に手を回してブラを脱がし、知紗をゆっくりとベッドに仰向かせた。

 「・・・ん、・・・ぁ」

 知紗の体は、どこもかしこも柔らかくて、首筋から鎖骨、胸の膨らみの周りをゆっくりと吸いながら俺と同じ温度に温めていく。
 はじめは、ふっくらとしていた知紗の胸の先も、淡いピンク色から徐々に色を変え始め、

 「や、・・・あん」

 固く弾力を持つ頃には、少し赤く染まっていたそれを、キスをする時の同じ舌の動きで角度を変えて刺激する。
 時々、所在を探している知紗の指がギュッと握られる反応で、感じるポイントをじっくりと探っていった。

 知紗だけの、そしてそれを俺だけが探せるというこの喜びは、好きな人を抱くからこそ、快楽を超えて夢中になれる戯れなんだ――――――。

 『100人の女を抱くよりも、好きな女を100回抱く方がいい』

 いつか、レントが言っていたそのセリフの意味が、今になって初めて全部理解出来た気がする。

 「ん、せんぱい、・・・やだ、せんぱい」

 ヤバイ。

 声だけで 射精 せる、俺。

 「・・・知紗、可愛い」

 身体を起こし、知紗の両足を右肩に抱えて、指をかけていた下着をスルリと脱がせる。

 「せ、せんぱ」

 「シッ、――――――知紗」

 驚いた様子の知紗の唇に指を当て、抱えていた両足を俺の体の片側に降ろす。

 腰から捻ったようなその真っ白な身体の横のラインに、スッと指先を這わせて、そしてそのまま、俺に向けられているお尻の方から、ソコに手を当てる。

 「濡れてる」

 「先輩・・・ッ」

 恥ずかしそうに顔を覆う知紗に、俺は言った。

 「それでも、まだ固いんだ。このままだと、凄く痛い思いをさせるから、知紗の中を、俺が柔らかくしてあげたい」

 「・・・」

 何を意味するのか、多分解っているんだろうけど、だからと言って、はいどうぞと開けるもんじゃないよね。

 "ハジメテ"の子を抱くのが、"初めて"じゃない事に、表裏、複雑な気持ちはあるけれど、

 俺の全力をかけて、知紗の一生の思い出になる幸せな初体験にしてやりたいって、心から思えた。

 「――――――知紗を、見せて」

 そのリクエストに、涙さえ浮かべて、知紗が真っ赤な顔で小さく頷く。

 「・・・先輩、・・・好きです」

 「うん。俺も好きだよ」

 「大好きです」

 「うん」

 知紗の片方の足を俺の手が掴んでも、知紗は逃げなかった。
 全てを任せるように、俺にされるがまま、知紗は足を開いた格好になる。

 そこに体を重ねて、俺はもう一度、唇へのキスから仕切り直して、胸、お腹、脇腹、骨盤の辺りまでじっくりと吸い上げ、知紗の太腿の内側から、徐々にそこに近づいた。

 「手、繋いでよっか」

 知紗の両手をそれぞれの手で掴んで、肘で押さえつけた足の間にあるそこに、ゆっくりと舌の腹を当てる。

 「・・・ッ、・・・ん」

 まだ奥に隠れている蕾を、丹念に探し出して、

 「あぁ、せんぱ、・・・いや、せんぱい!」

 舌先の動きを刻めば刻むほど、知紗の指先に力が入ってくる。

 「ふう、・・・あっ・・・」

 ビクン、ビクンと知紗の身体が跳ねて、軽くだろうけど、イった事を感じた。
 同時に、中からじわりと湧き立ってきた独特の性の香りと、舌に絡んできた知紗の味に、悦びが零れる。

 一度、きゅっと指を握って、それを合図に知紗の手を離した。
 舌はまだゆっくりと蕾の上を前後させながら、自由になった中指の先を、その泉の中に沈ませてみる。

 「・・・痛い? 知紗」

 「・・・だい、じょう、で」

 表情は良く見えないけれど、声から察するとまだ苦しそうじゃない。
 ゆっくりと奧まで入れて、時間をかけて、円を描くようにして解していく。

 「ぁ、」

 俺の指を誘うように、知紗の中が更に熱くなった。

 「・・・ぁ、・・・先輩、せん、ぱい・・・」

 「知紗?」

 「お願いします、ギュってしてください」

 「――――――知紗」

 何故か、涙を流して泣いている知紗に驚いて、慌てて目の位置を合わせる。

 「どうした?」

 「すみませ、あたし」

 「――――――寂しくなっちゃった?」

エッチしたくない、なんて答えが出ないように、卑怯だけど先手を打つ。

 「・・・はい」

 「ごめんね。痛くないようにしてあげたいって思った分、知紗を置いてけぼりにした」

 「・・・」

 「もう一度、指、入れてみていい?」

 間をおいて、コクリと頷く知紗に、今度は視線を合わせたまま、愛撫を再開する。

 二本の指を入れて、丁寧に中を広げるようにしながら、

 何度も何度も、知紗の顔にキスを浴びせた。

 「先輩、・・・せんぱいッ」

 「気持ちい?」

 「・・・はい」

 うっとりと目を潤ませるその様子に、俺のムスコが限界点に到達。
 これ以上の我慢は、肉体的にも、精神衛生上も、絶対に良くない。

 「ちょっと、ごめんね」

 体を起こして、中途半端に肌蹴ていたシャツを脱ぐ。
 そのまま一気にボトムも脱いで、

 「きゃッ」

 俺の元気なムスコを目にしてしまったらしく、知紗が驚いた様子で顔を背けたけれど、

 "長いお付き合いになるので、よろしく"

 ――――――と、ギャグじゃなくて、真剣に挨拶させたい気分になった。

 そんな自分がマジでヤバいと思えたりして・・・。

 「知紗」

 もう一度、全裸の状態で知紗の体に乗りかかる。
 この状態から、とにかく最初からなぞり直し。

 「先輩」

 「キス、しよ」

 髪を撫でて、

 「・・・篤先輩」

 「舌、出して」

 キスをして、

 「知紗の胸、すっごい柔らかい」

 俺の唾液に濡れた可愛い先の真横に、小さなキスマークをつけてみた。
 ちょっと痛そうにしていた知紗の顔が、これからの事を自覚させて心の準備をさせてくる。

 「身体が固いと、知紗が痛い思いしちゃうから、もっとたくさんキスしよ。いつもみたいに、夢中になって」

 「・・・ん、・・・ぁ、せんぱ」

 「ね? もっと可愛い知紗が見たい」

 深く深く、キスをしてる間に、どうにか 避妊具 ゴム を着け終えて、

 「知紗」

  挿入 れる合図として、知紗のソコに、手を触れさせる。

 「・・・いい?」

 「――――――はい」

 何度か、俺の先を知紗に擦りつけて、その愛液を共有した。

 知紗の両足を腕にかけて、ゆっくりと腰を進めていく。

――――――やば、

 ・・・火傷しそうなくらい、熱い――――――。

 「・・・ッ、・・・ぅ」

 知紗の息が漏れる。

 眉間に皺が寄るくらいの苦しさを、声に出さずに健気に耐えている。

 「く、・・・知紗」

 ああ、これヤバイ。

 かなり気持ちいい。

 中の狭さと、痛いくらいに俺を拒絶する感じも、

 知紗の初めてを、俺が今、味わっているという征服感と相まって、

 「ッ、ぁあぁ、はぁ、・・・くぅ」

 俺が圧し入るたび、次第に知紗の眉間が険しく狭まっていく。

 「知紗、もうちょっと、我慢できる?」

 「・・・ぁ、・・・はい、大丈夫、で、・・・ッ」

 必死で頷く知紗が、とても可愛くて、凄く愛しくて、

 「知紗、」

 「せんぱ」

 引っかかった。

 ごめん、知紗――――――。

 これから知紗を襲うだろう激痛に、心の中で謝罪して、

 「知紗ッ」

 俺は、知紗の肩を強く掴んで、一気に貫いた。

 「・・・ッ!」

 声にならない知紗の悲鳴が、全身の強張りから伝わった気がした。

 しばらくは、お互いの呼吸だけが耳に響いて、

 「・・・知紗、――――――全部、入ったよ」

 伝えた途端、

 なんでだろう。

 知紗、知紗――――――。

 俺も、知紗と同じくらい、泣きたい気持ちだ。

 涙が零れるその眼差しから、しばらく目が離せない。

 このままずっと、

 これからずっと、

 知紗と、こうして――――――、

 「・・・ごめん、もう我慢できないや。動いていい?」

 「はい」

 「きつかったら言って、・・・多分、止められると、思う」

 「は、い」

 音楽も無い俺の部屋に、夢中で知紗を求める俺の呼吸と、それに健気に応える知紗の声だけが響いている。

 「ぁ、ああ、せんぱ、」

 「知紗、知紗――――――」

 初めての知紗を、何度も何度も奧まで刺した。

 離したくないと密着して抱きしめながら、
 知紗と繋がっているところを、変態的にニヤニヤと見つめながら、



 「知紗」

 「―――――先輩ッ」

 「知紗―――――・・・ッ」
 最後は、こんなに出るもんかよって自分で呆れるくらいに長く 射精 して、
 それからすぐ、乱れた息も整わない内に、知紗が大粒の涙を流しながら俺の下で呟いた。



 「―――――あたし、幸せです、先輩」

 うん。

 俺もだよ、知紗。

 俺も、スゲェ、幸せ――――――。



 ねぇ、知紗。

 クリスマスツリーって、どうしてモミの木だか知ってる?
 それはね、モミの木が"永遠の命"という意味を持っているからなんだって。

 「知紗」

 俺と知紗の恋も、
 一年中葉を落とす事のない、そんな常緑樹のような"恋"にしていきたい――――――。

 頬を撫でて、

 本当に柄にもなく、

 そう、言葉にしようとした時だった。

 さっきまで俺を切なく呼んでいたその唇から、信じられないようなセリフ――――――、



 「いつでも、お別れ、大丈夫ですから」

 ――――――え?

 "イツデモ、オワカレ、ダイジョウブデスカラ"



 突然の事に、頭が真っ白になる。

 まだ体は繋がったまま、

 俺の心は、知紗との未来にのめり込んだまま、



 ―――――二人の身体は、まだ快楽の余韻すら冷めやらないこの状況で、



 "お別れ"



 「知紗・・・?」



 俺と知紗の見ている未来が、あまりにも違い過ぎる現実に初めて気がついて、俺は息が止まりそうだった。








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