小説:食べられる花


<食べられる花 目次へ>


Episode:雪


 ――――――
 ―――――

 「いらっしゃいませ」
 「ようこそ"Stella"へ」

 王子に連れてこられたのは、ジュエリーの老舗ブランド、"Stella"の本店。
 ネット販売が主流になり、その波に乗って流行っては廃れる若手ブランドが入れ替わる中、どっしりと業界に座り続けているブランドだ。
 店員さん達の厳かで柔らかい挨拶はさすがで、すごく勉強になる声のトーンだと思う。
 あたしは声が高いから、きちんとした敬語が使えないとすぐにユーザーに侮られてしまう。

 「あら、たくみさん?」

 上品な制服に身を包んだ三十代くらいの女性が、王子を見つけるなりやってきた。

 「いらっしゃいませ。お久しぶりですね」
 「テルイさん、今日はこっちにいたんですね」
 「今は月の半分は日本にいるんですよ」
 「もしかして、マネージャになる話って、ほんとそう?」
 「…相変わらず耳が早いんですね」

 困ったように笑ったその女性は、それからあたしへと視線を向けた。

 「あら、そちらの方は?」
 「俺の彼女」
 「えッ!?」

 テルイさんは、何故か大きく目を見開いていて、

 「彼女!? たくみさんの!?」
 「ブレスレットをね、欲しくて」
 「ブレス、レットを――――――?」
 「うん」
 「まあ…それは、」

 口元に手をあてたテルイさんに、驚き過ぎじゃないかと思ったけれど、少し目を伏せた王子との間に奇妙な沈黙が流れたのを感じて、何も突っ込めずに立ち尽くす。


 「――――――たくみ?」

 もの凄く印象的な、とても心地よく耳に残る低めの声がかかったのは、そんなタイミングだった。

 「ルビさん」

 王子の表情がいつもの明るいものに切り替わる。

 ルビさん。
 王子にそう呼ばれた人は、クリーム色に近い金の髪と、それからキラキラと輝く黄金の瞳を持つ、日本人離れした容姿の人で、


 うわぁ…、なに、この人。

 普通のコート姿が普通に見えない。

 王子より、超絶王子様って感じの人。
 王子は、日本人の枠からははみ出ない王子だけど、この人は間違いなく異国の王子様だ。



 「たくみが"Stella"に来るなんて珍しいね。まさかまた――――――」

 少し眉間に皺を寄せながらそう言いかけて、金色の王子様があたしへ視線を流し、そして止めた。


 「…この女性は?」


 女性だなんて表現、普通しませんよね?

 紳士だ。
 二次元には生息していない筈の紳士がいる。


 「俺の恋人《ステディ》。魔法にかけちゃダメですからね、ルビさん」


 睫毛がすごい…。
 これって天然だよね?

 睫毛もクリーム色の金なら、もしかしてあそこも…なんて想像が膨らんでしまった。


 も、悶える――――――。



 「こら」

 目の前で手を振られ、その餌に釣られてハッとした。


 「想像禁止」
 「じ、自重します…」


 バレないように脳内で。


 「社長、たくみさん、ブレスレットを買いに来てくださったそうですよ」
 「――――――ブレスレットを…?」

 なんだか、さっきからすごく耳に付く"ブレスレット"という単語。

 "Stella"のブレスレットに何かジンクスとか、エピソードってあったっけ?
 今度調べてみよう。

 それにしても――――――、


 「雪、こちら"Stella"の社長で本宮ルビさん」

 やっぱり社長なんだ。
 王子と変わらないくらいに見えるのに、こんな世界的ブランドの社長してるとか、凄過ぎる。

 親の後を継いだのかな…?
 見た目だけじゃなくて立場も王子様かぁ…。

 細い指。
 関節までがいちいち長いな。
 …薬指に指輪、してる。
 はてさて既婚者か、それとも虫除けか?


 「ユキ…?」

 反芻するように呟いたルビさんに、王子が直ぐに笑顔で補足した。

 「SNOWの雪です」
 「…ブレスレットは彼女と?」


 …ん?
 あたし?

 「はい」
 「そう――――――」

 王子と、一瞬だけ、考えるように視線を床に逸らした王子様。
 再び視線を合わせた二人のその間に、どんな意思の疎通があったのか、

 「――――――テルイさん」

 ルビさんが、その綺麗な顔を笑みにして、テルイさんへと指示を出した。

 「僕の部屋からスノーホワイト、ロット0を持ってきて」
 「えッ!? あ、はい。かしこまりました」

 テルイさんは素早い足取りで奥へと向かって行く。

 「ルビさん…」

 何故か、小さな溜息と共に苦笑した王子に、王子様はまたふわりと笑う。
 髪の色をはじめとする、全体的に淡い色彩のせいなのか、存在に霞がかった人だなと思えた。

 「漸く渡すことが出来て嬉しいよ。ゆっくり話したいけれど、これから成田なんだ」
 「ロスですか?」
 「うん。帰ったら連絡するから、その時は四人で食事でも行こう」
 「わかりました。千愛理さんにもよろしく伝えてください」
 「うん。それじゃあ、雪さんも、また」
 「あ、はい」

 歩き出す王子様に、左右から入れ替わり立ち替わりで人が声をかけては去っていく。
 その応対としてタブレットにサインをしたり、首を振ったりと、外で待機していた車に乗り込むまでそれは続いて、

 「相変わらず忙しそうだな、あの人」
 「あの若さで社長さんだなんて凄いね」
 「十五の時からやってるんだよ、他にもいくつか会社持ってる。本宮グループの会長」
 「…いくら何でも設定詰め過ぎじゃない?」

 現実離れしたハイスペック装備だ。

 「アメリカ育ちなんだ。初めて会社作ったの、確か十歳前後だった筈だよ。ルビ・コーポレーション、R・C。つまり、この"Stella"の所有者ね」
 「天才か」
 「天才だね。IQ高くて、その手の機関にも登録されてるって聞いたことあるし」

 それはもう本物の宇宙人だよ。

 「すごい人と知り合いなんだね?」
 「ちょっとね」
 「ふうん」

 曖昧に笑うから、何となく踏み込まない方がいいような気がして、あたしはそれ以上の続きがないようにピアスコーナーへと目を移した。




 ルビさんが言っていた"スノーホワイト"。
 それはどうやら花の名前だったらしくて、


 「気に入ってくれた?」

 歩きながらも、何度も何度も、自分の左腕を見るあたしに、王子は満足気に目を細める。


 「――――――うん」


 ブレスレットは18金の細いチェーンと1cmくらいの幅のあるバングルとの2ラインのデザインで、オパールで作られた二重花びらの小さなスノーホワイトが幾つかぶら下がっているけれど、バングルに施された彫刻がカッコよくて、甘さとカッコ良さが半々。

 ちなみに、王子が付けている方は、バングルがあたしのより太くて、オパールの花はその中に埋め込み式。
 チェーンはシンプルに添えられているだけの、

 …見る人が見ればわかる。

 つまりは、ペア。

 イヤホンのBluetoothペアリング以外でその単語を使う日が来るなんて、思ってもいなかった。
 女の子達と、上辺だけのお揃いはたくさんあったけど。


 「あり…がと」

 付き合った記念に――――――とか。
 "Stella"で、そう言った王子自ら手首につけられた時はびっくりしたけれど、


 『雪とお揃い、すごく嬉しい』


 嬉しそうに笑った王子の思考はどこまでも"王子"で、あたしも、そのお花畑に埋もれてしまった。
 傍で見守るように立っていたテルイさんが何度も目を潤ませて頷いていたのは、正直、ちょっと引いたけど…、

 ルビさんやテルイさんと王子の関係について踏み込めない現状で、それを話題にするのも憚られて避けた。






 「――――――お、たくみ、来た来た」


 やってきた亜希さんのレストランは、「本日貸し切り」看板有り。
 店内から料理を運んでいた亜希さんが、ゲートを潜って敷地内に入った王子へと声を上げたのに釣られて、十人以上の男女が一斉にこちらを振り向いた。
 大体が年越しパーティと同じような面々だ。


 「二月の最終日曜は恒例なんだ。いつどうして始まったかって、実はあんまり覚えてないんだけどね」
 「みんな同じ大学の人?」
 「違う人もいるよ。俺と亜希、咲夜さくやと、巽は覚えてる? あいつも同じ学部」

 室瀬咲夜さくやの近くにいる人を見て、大晦日の記憶からうっすらと探り出した。
 見た目が煌びやかな男子の中で、一見普通に見える彼は、中身がハイスペックなんだと大人から子供まで女子が全員で絶賛していたのを覚えている。

 「七緒ちゃんは短大部で、隣にいるなっちゃんこと夏芽は巽の奥さん。彼女は別の学部だったから、亜希と七緒ちゃんが付き合い始めてからかな。一緒に遊ぶようになったのは。で、その後ろで電話してるのは元子ちゃん。俺としてはあまり雪には近づかないで欲しい人」

 豪快な笑みが似合う、ショートカットのさっぱりした雰囲気っぽい人だけど、なんで?

 無言でもその問いが伝わったのか、王子は僅かに目を座らせた。

 「AVの専門家なの。ネタにされるから、絶対に下ネタに誘導されないでね」
 「…」

 自分から罠にかかりたいかも。

 「雪?」
 「…はぁい」

 とりあえず返事はお行儀よくしておこう。

 「ほかのメンバーは追々覚えていけばいいよ。あとはその兄弟姉妹、従妹もいるし、子供の数も年々増えてる。大学以外で繋がってるメンバーもいるけど――――――今日は来てないかな」
 「ふうん…」

 何ていうか、

 「すごいね」

 その一言に尽きる。

 こうしてきちんとした繋がりを目の当たりにすると、あたしの歩いてきた道ってなんなんだろうって考えてしまう。
 自分で選択した過去だけど、振り返ると、もっと違う道があったのかなって思えてしまった。

 …無いもの強請《ねだ》りに近い気がするけどね。


 ――――――実はさっき、あたしは"Stella"で学生時代の遊び仲間の顔を見つけていた。
 結婚指輪コーナーの前で男の人と腕組んでいたから、結婚するんだって思いはしたけれど、

 久しぶり! 結婚するの、わ〜、おめでとう!

 なんて、声をかける気には全然ならない。

 もし向こうが先に見つけてきて、万が一声をかけられたらどうなんだろうって考えれば、結婚式に招待されたらどうしようなんて、不誠実な事を思ったり、

 でもどうかな、誘うかな?

 だってあたし、彼女にとっては男に塗れた色歴史を知ってる危険人物わけよ、向こうにとって。

 そこまで想定して展開を広げたら、無性に残念な感じで、


 どうしようもなく、薄っぺらいんだよね、あたしの思い出って…。


 「いいなぁ…」

 あたしには無いものを、王子は、たくさん持っているような気がする。
 その綺麗な手を、別の意味でも羨ましく思ってしまった。


 「――――――ね、雪」
 「ん?」
 「雪もさ、もう仲間入りしてるって、自覚ある?」
 「…え?」

 不意に、繋いでいた手がギュっとされて、あたしは隣に立つ王子を見上げた。
 途端に短いキスが唇に落ちる。

 「ちょ、王子」
 「なに? 姫」
 「ぅ」

 キラキラ、王子スマイルが降ってくるけど、

 「みんな見てるのに!」
 「いいの。カップルは結構いちゃいちゃしてるよ? 子供達の教育に悪くない程度で」
 「…むぅ」

 あたしはまだ新参者なのに。

 「これからは、みんなとの集まりのスケジュールは共有するから、雪には出来るだけ俺と一緒に参加して欲しい」
 「…」
 「ね?」

 少し屈んできた王子の念押しは、それは強烈で、

 「…ぅん」


 何ていうか、どうしよう…。
 確かに女の幸せを、感じてしまっているあたしがいる。

 くううう、布団の中でジタバタして、恥ずかしさを拭いたい。





 「こんにちは、たくみさん。雪ちゃんも、また会えて嬉しい」

 王子に手を引かれてみんなが座っているベンチテーブルへと足を進めれば、七緒さんがおっとりとした笑顔で出迎えてくれた。

 「雪ちゃん! 大晦日ぶりだね。元気だった? っていうか、覚えてる?」

 この元気な人が夏芽さんで、最初は満面の笑顔、セリフの後半でちょっと心配そうな顔。
 そんな風に表情がコロコロと変わるところを、大事そうに見守っている人が巽さんで、その隣には室瀬咲夜さくやか――――――。

 「覚えてますよ。後半あたりはちょっと厳しいんですけど」
 「あはは、あれだけテキーラ飲んでちゃね」
 「お世話かけました…」

 思わず頭を下げたあたしに、七緒さんが慌てた様子で両手を振る。

 「ううん! 全然! たくみさんがずっとフォローしてたから、問題なかったよ」
 「どっちかっていうと、そのたくみさんに雪ちゃん任せる事の方が危機感覚えてたけど。やっぱり食べられちゃった?」
 「なっちゃん!」

 顔を真っ赤にする七緒さんは、マフラーから覗ける首筋までピンク色に染まっていて、すっごく可愛いらしい。
 亜希さんがメロメロなわけだ。

 ベッドではさぞかし――――――、


 「雪」

 王子が、あたしの脳内空想を戒めるように名前を呼んだ。


 はいはい、自粛します。

 と即座に態度で表すと、


 「ちょっとここで待てる? 少し咲夜さくやに話したいことあるから」
 「え?」


 どうやら理由が違っていたらしい。


 「うん。大丈夫」
 「そうよ。大丈夫大丈夫。とって食べたりしないから」

 あたしが応えるのと同時に、夏芽さんもそう言えば、

 「じゃあよろしく」

 納得したように頷いた王子から、繋いでいた手をするりと解かれる。
 冬の空気が掌を包んで、一瞬で寒くなった。


 ――――――手袋、持ってくれば良かったな。


 両手を擦り合わせて息を吹きかけると、


 「雪ちゃん、何飲む?」
 「日差しがあっても寒いよね。あったかいのもあるよ?」

 ワインのボトルを抱きながら言う夏芽さんと、ポットを手にした七緒さんと。
 隣同士で両極端なお勧めに思わず苦笑。

 「えっと、温かい方で」
 「ええええ? 今日は飲まないの? 雪ちゃん。酔っぱらってたくみさんを踏み踏みしてるとこ、また見たかったのにぃ」

 ふみふみ?

 「もう、なっちゃんったら。ごめんね、雪ちゃん。気にしないで? もう酔っぱらってるみたいで」
 「あ、そう、なんです、ね」


 ふみふみ…――――――って、踏み踏み?

 足蹴?

 …あたし、前回、王子に何しちゃった?



 チラリと王子の方を見ると、なんだか真剣な顔で話をしている真っ最中で、それを受け止める室瀬さんは、眉間を狭めながら難しい顔をしている。


 「はい、雪ちゃん、どうぞ」

 七緒さんに声をかけられて、あたしは大きなマグカップを受け取った。
 たっぷりと注がれた紅茶はカップを既に温めていて、手の中にじんわりと温かさが染みている。

 「ありがとうございます」

 カップに唇をつけるかつけないかの距離で微かに吸い飲むと、ホッと吐き出した息もほんのり熱かった。

 「お料理は中に準備してあるから、バイキングで好きなもの取って、どんどん食べてね」
 「はい」

 うわぁ、贅沢な休日だ。
 さっさと取りに行きたいけど、やっぱり王子を待った方がいいよね…。

 「寒くなったら中で自由に寛いでいいから」
 「はい、ありがとうございます」
 「もう、七、そんな子供構うみたいに言わなくても大丈夫だよ。ね? 雪ちゃん」
 「はい。たくみさんと後でいただきますね」
 「ほら」
 「なっちゃんったら…」

 二人の、仲の良さそうなやり取りに、思わず奥歯に笑いを噛みしめてしまう。
 親友ってこんな感じなんだね――――――と、感心しながら紅茶を二回ほど呑み込んだ時、



 「――――――ああ! それ! "Stella"のスノーホワイトじゃない」



 電話を終えてテーブルに戻ってきたショートカットの、王子が避けて欲しいと話題にしていた元子さんが、あたしの手首を見るなりそう声を上げた。




 「え? ――――――あ、はい」


 呆気にとられながらもどうにか肯定して、

 「あ、ほんとだ」
 「それ、もしかしてたくみさんに貰ったの?」

 夏芽さんと七緒さん、それぞれにもちょっと照れ臭いけど頷いて見せる。

 「って、コ、ト、ワぁ」

 元子さんの言葉を合図に、お姉様方三人は、一斉に王子のいる方を見た。

 「おお、光ってますなぁ!」
 「ペアだ、ペア、ほら、七!」
 「うん。そっか…ちゃんと付き合う事になったんだね」

 七緒さんが、両手を合わせて目をキラキラとさせている。

 「付き合う…って、えっと…」

 く、言葉《くち》にすると、とたんに現実《リアル》っぽくなる。

 いや、リアルなんだけど。


 「…はい、そう、ですね…」
 「そうだよね。今日連れてきたって事はちゃんと意味があるって思ってた。うん」



 ――――――?


 「はぁ、良かった〜。これで漸くたくみも普通の人の道を歩くわけね」
 「……?」
 「一生彼女作らないかと思ってから。ふふ。あなたと付き合ったって事はもう大丈夫よね。喜びなさい! 彼氏宮池たくみの長年の変態疑惑はたった今晴れたわ!」
 「…変態?」

 そんな疑惑が仲間内からあったのか、あの王子。

 「漸く一安心ね」

 元子さんの言葉に、夏芽さんと七緒さんが相槌を打っている。

 安心――――――うーん、それは、何とも反応が難しいところ。
 あのリストを粛々とこなそうとしている王子に何だかんだと付き合っているあたしは、その変態の同類かもしれなくて…。

 「ふふ。そっかぁ。なんか嬉しいね」

 言いながら、元子さんがバックからカードケースらしき物を取り出した。

 「はじめまして、私は樋口元子。女性のためのAV制作の会社を運営してるの。それ、広告用サイトだから、よかったらアクセスしてね」
 「えッ!」

 オレンジのネイルが綺麗な手で差し出された名刺には、しっかりとURLが入っていて、

 「誰でも閲覧できるんですか?」

 一気にテンションが上がってしまう。

 「あら、好い食いつき」
 「だって、興味あってもなかなかクリックって勇気が必要で、変なページとか勝手に開いたりする事があるじゃないですか?」
 「あるわねぇ。でも今はブラウザの方が広告のあり方を厳しめにしてるから、そういうサイトは減ったかな。うちのサイトは大丈夫よ。制作販売元だから。ただ、無料で見られるのは広告用のダイジェスト版だけなのよね。あとは一本ごとにレンタルなの」
 「なるほど!」

 うわぁ、URLがキラキラして眩しい。
 帰るのが楽しみになってきた。

 「ふふ、たくみが好きになるのわかるわぁ」
 「え?」
 「かわい子ちゃん。あなたのお名前は?」
 「あ」

 あたしは名刺を手元において、ペコリと元子さんにご挨拶。

 「はじめまして。藤代雪です」





 ――――――あれ?










著作権について、下部に明記しておりマス。



イチ香(カ)の書いた物語の著作権は、イチ香(カ)にありマス。ウェブ上に公開しておりマスが、権利は放棄しておりマセン。詳しくは「こちら」をお読みくだサイ。